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睡眠時無呼吸症候群は矯正で改善できる?対症療法との違いを歯科医が解説
2026年9月2日

睡眠時無呼吸症候群と診断され、CPAPやマウスピースを使い始めたけれど、これをこの先ずっと続けるのだろうか。そんな疑問を持たれている方は少なくありません。
CPAPもマウスピースも、有効性が確立された優れた治療法です。しかし、これらはいずれも、装着している間だけ気道を確保する治療、つまり対症療法です。外してしまえば、気道が狭いという状態そのものは変わりません。
では、気道が狭いという原因そのものにアプローチする方法はないのでしょうか。実は、歯科の矯正治療が、その選択肢になり得ます。この記事では、札幌市西区の「みかみ歯科医院」が、睡眠時無呼吸症候群に対する矯正治療の可能性について、歯科医師の目線から解説します。
睡眠時無呼吸症候群と歯科の意外な関係
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりを繰り返す状態です。日中の強い眠気や倦怠感だけでなく、高血圧や心疾患、脳血管疾患のリスクを高めることが知られています。
呼吸器内科や耳鼻咽喉科で診断・治療を受けるのが一般的ですが、実は歯科も深く関わっています。なぜなら、気道の広さは、上あごの幅や舌の収まるスペース、つまり口腔内の構造に大きく左右されるからです。
上あごが狭い方は、その上にある鼻腔も狭くなります。また、口腔内のスペースが狭ければ、舌の居場所がなくなり、後方に落ち込んで気道をふさぎやすくなります。歯並びや顎の形は、単なる見た目の問題ではなく、呼吸の通り道と直結しているのです。
CPAPやマウスピースは対症療法という事実
睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法について、その位置づけを整理しておきましょう。
CPAPの役割と限界
CPAPは、鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を広げた状態に保つ装置です。中等症から重症の方に対して高い効果が認められており、標準的な治療法として広く用いられています。
ただし、CPAPは装着している間だけ効果を発揮します。使用をやめれば、無呼吸は元に戻ります。つまり、原因を取り除いているわけではなく、毎晩装着し続けることが前提の治療なのです。装着時の違和感や、旅行時の持ち運びなど、負担を感じる方も少なくありません。
口腔内装置(マウスピース)の役割と限界
歯科で作製するOSAS用のマウスピースは、下あごを前方に固定することで、舌の落ち込みを防ぎ、気道を確保する装置です。軽症から中等症の方に用いられ、CPAPよりも手軽という利点があります。
しかし、こちらも装着している間だけ気道を確保する対症療法です。長期間の使用によって噛み合わせが変化することもあり、また重症例では十分な効果が得られないこともあります。
対症療法が悪いわけではない
誤解しないでいただきたいのは、これらの治療法が劣っているという話ではないということです。無呼吸は放置すれば全身の健康を脅かしますから、まず今の呼吸を確保することは何より重要です。
ただ、その先に、原因そのものを改善するという選択肢があることを知っていただきたいのです。
矯正治療が気道にアプローチできる理由

矯正治療は、対症療法とは異なる角度から、睡眠時無呼吸症候群にアプローチします。
上あごを広げると鼻腔も広がる
歯列を拡大すると、上あごの幅が広がります。上あごの上には鼻腔がありますから、上あごが広がれば、鼻腔も広がります。
ここで大切なのは、たくさん広げる必要はないということです。風邪をひいて鼻が詰まっているとき、お風呂場で少しだけ鼻が通っただけで、ずいぶん楽になった経験はないでしょうか。現状より少し鼻腔が広がるだけで、呼吸はぐっと楽になるのです。
舌の居場所を作る
口腔内が狭いと、舌が収まるスペースがありません。行き場を失った舌は、下や後方に落ち込みます。睡眠中は筋肉が緩みますから、落ち込んだ舌がさらに喉の奥へ沈み、気道をふさぎます。
歯列を拡大して口腔内のスペースを広げると、舌が本来あるべき位置、つまり上あごに収まりやすくなります。舌が上あごに接していれば、喉に落ち込みにくくなり、気道が保たれやすくなるのです。
装着している間だけではない
矯正治療によって得られた気道の広さは、装置を外した後も残ります。ここが対症療法との決定的な違いです。
毎晩何かを装着し続けるのではなく、構造そのものを変えることで、呼吸しやすい状態を目指す。これが、矯正治療によるアプローチです。
大人でも歯列を広げられるようになった

かつて、歯列を広げる拡大治療は、成長期の子供にしかできないとされていました。この常識が、睡眠時無呼吸症候群に悩む大人の方にとって大きな壁でした。
大人の上あごは、真ん中の骨のつなぎ目である口蓋縫合が骨化しているため、歯を押すだけでは広げることができません。しかし、マイクロインプラントという矯正用の小さなネジを支点として用いることで、成人でもスケルトン拡大装置による歯列拡大が可能になりました。
当院では、これを成人拡大と呼び、大人の呼吸の改善に用いています。子供のうちに治療を受けられなかったから諦めるしかない、という時代ではなくなったのです。
当院の保田矯正という考え方
当院で行っている保田矯正は、睡眠時無呼吸症候群へのアプローチにおいても、いくつかの特徴があります。
複数の装置を組み合わせる
保田矯正は、ひとつの装置に頼るのではなく、複数の矯正装置を組み合わせて、それぞれの長所を活かす治療です。
気道を広げるためのスケルトン拡大装置、成人でも拡大を可能にするマイクロインプラント、歯の重なりを改善するアラインチューブ、細かな仕上げを行うマルチブラケット装置やアライナーなど、その方の状態に応じて最適な組み合わせを選びます。
なお、マウスピース単独で治療が完結する症例は、全体の2割から多く見積もっても3割程度です。気道の確保が目的の場合はなおさら、装置の組み合わせが重要になります。
拡大は成長のスピードに合わせて
拡大治療で必ず守らなければならないルールがあります。それは、拡大のスピードと拡大の量です。
矯正学の権威であるノースキャロライナ大学のプロフィット教授も著書で述べているように、拡大は急速拡大ではなく、緩徐拡大でなければなりません。短期間で一気に広げると、鼻腔底の広がりに鼻の高さがついてこられず、鼻が低くなるなど、顔立ちが意図しない方向に変わってしまうことがあります。
また、拡大の量にも限界があります。審美に関係する上の前歯6本分の幅は、平均37mm程度とされており、これを超えて広げすぎると、上下の噛み合わせに問題が生じます。呼吸のために広げるといっても、無制限に広げてよいわけではないのです。
舌の位置を整えることも同時に行う
気道の確保には、舌の位置が深く関わります。
舌の正しい位置は、上あごの裏側にあるスポット、つまり上の前歯の裏側あたりの歯肉です。ここに舌が収まっていれば、喉の奥に落ち込みにくくなります。しかし、舌の筋力が不足していると、舌は後方に下がり、気道を狭くします。これが低位舌と呼ばれる状態です。
低位舌は、気道を狭くするだけでなく、嚥下効率を下げます。人は代償行為として気道を確保しようと首を前傾させるため、ストレートネックになり、肩こりや姿勢の悪化にもつながっていきます。
当院では、矯正治療と並行してMFT(口腔筋機能療法)を行い、舌を正しい位置に導くサポートもしています。装置で構造を広げ、トレーニングで舌の位置を整える。この両輪で、より確実な改善を目指します。
睡眠時無呼吸症候群の矯正に保険は適用される?

費用面を気にされる方も多いと思いますので、保険の考え方を整理しておきます。
歯科で作製するOSAS用の口腔内装置、いわゆるマウスピースについては、医科の医師から診断書と依頼を受けた場合、保険適用となります。睡眠時無呼吸症候群と診断されていることが前提です。
一方、歯列を拡大したり歯並びを整えたりする矯正治療そのものは、原則として自由診療となります。矯正治療で保険が適用されるのは、厚生労働大臣が定める先天性疾患、永久歯の萌出不全、そして顎変形症で外科手術を伴う場合に限られているためです。
睡眠時無呼吸症候群の改善を目的とした矯正治療は、これらに該当しないことがほとんどですので、費用については事前にしっかり確認しておくことをおすすめします。
矯正で改善が期待できる方・難しい方
矯正治療がすべての睡眠時無呼吸症候群に有効というわけではありません。
上あごや歯列が狭い方、舌の収まるスペースが不足している方、下あごが後退している方などは、矯正による改善が期待できる可能性があります。逆に、肥満による首周りの脂肪が主な原因である場合や、扁桃肥大など耳鼻科的な原因が大きい場合は、そちらへの対応が優先されます。
また、重症度によっては、矯正治療と並行してCPAPを継続することが望ましい場合もあります。矯正を始めたからといって、自己判断でCPAPをやめることは危険です。必ず主治医と相談しながら進めてください。
まずは精密検査で、ご自身の気道が狭くなっている原因がどこにあるのかを確認することが第一歩です。当院では、CT撮影やセファロ分析などを用いて、骨格や気道の状態を詳しく診査しています。
まとめ:対症療法の先にある選択肢を知ってください
睡眠時無呼吸症候群の治療において、CPAPや口腔内装置は非常に有効な方法です。ただし、これらは装着している間だけ気道を確保する対症療法であり、気道が狭いという原因そのものは変わりません。
矯正治療は、歯列を拡大して鼻腔を広げ、舌の居場所を作ることで、気道が狭いという原因そのものにアプローチします。かつては子供にしかできなかった拡大治療も、マイクロインプラントを用いることで、成人でも可能になりました。
当院の保田矯正では、複数の装置を組み合わせながら、成長のスピードに合わせた緩徐拡大と、適切な拡大量を守って治療を進めます。同時にMFTで舌の位置を整えることで、装置と機能の両面から改善を目指します。
きれいになるための矯正治療は間違っていません。でも、私たちは健康できれいになってほしいと願っています。札幌市西区の「みかみ歯科医院」では、保田矯正による成人拡大で、呼吸から健康を考える治療を提供しています。CPAPやマウスピースを使い続けることに疑問を感じている方は、一度ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1: 睡眠時無呼吸症候群は矯正治療で治りますか?
すべての方が矯正治療で治るとは限りませんが、改善が期待できるケースはあります。気道が狭くなっている原因が、上あごや歯列の狭さ、舌の収まるスペースの不足、下あごの後退などにある場合、矯正治療によって気道を広げることが可能です。一方、肥満による首周りの脂肪が主な原因である場合や、扁桃肥大など耳鼻科的な原因が大きい場合は、そちらへの対応が優先されます。まずは精密検査で、ご自身の気道が狭くなっている原因がどこにあるのかを確認することが第一歩です。当院ではCT撮影やセファロ分析を用いて骨格や気道の状態を詳しく診査しています。
Q2: CPAPやマウスピースとの違いは何ですか?
最も大きな違いは、対症療法か、原因へのアプローチかという点です。CPAPは鼻に装着したマスクから空気を送って気道を広げる装置、口腔内装置は下あごを前方に固定して舌の落ち込みを防ぐ装置で、どちらも装着している間だけ効果を発揮します。使用をやめれば無呼吸は元に戻るため、毎晩使い続けることが前提です。一方、矯正治療は歯列を拡大して鼻腔を広げ、舌の居場所を作ることで、気道が狭いという構造そのものを変えます。得られた気道の広さは、装置を外した後も残ります。ただし、対症療法が劣っているわけではなく、まず今の呼吸を確保することは何より重要です。
Q3: 大人になってからでも気道を広げる治療はできますか?
はい、できます。かつて、歯列を広げる拡大治療は成長期の子供にしかできないとされていました。大人の上あごは、真ん中の骨のつなぎ目である口蓋縫合が骨化しているため、歯を押すだけでは広げることができないからです。しかし、マイクロインプラントという矯正用の小さなネジを支点として用いることで、成人でもスケルトン拡大装置による歯列拡大が可能になりました。当院ではこれを成人拡大と呼び、大人の呼吸の改善に用いています。ただし、拡大には守るべきルールがあります。急速拡大ではなく成長のスピードに合わせた緩徐拡大で行うこと、そして上の前歯6本分で平均37mm程度という拡大量の上限を守ることです。呼吸のためだからといって、無制限に広げてよいわけではありません。
Q4: 睡眠時無呼吸症候群の矯正に保険は使えますか?
歯科で作製するOSAS用の口腔内装置、いわゆるマウスピースについては、医科の医師から診断書と依頼を受けた場合、保険適用となります。睡眠時無呼吸症候群と診断されていることが前提です。一方、歯列を拡大したり歯並びを整えたりする矯正治療そのものは、原則として自由診療となります。矯正治療で保険が適用されるのは、厚生労働大臣が定める先天性疾患、永久歯の萌出不全、顎変形症で外科手術を伴う場合に限られているためです。睡眠時無呼吸症候群の改善を目的とした矯正治療は、これらに該当しないことがほとんどですので、費用については事前にしっかりご確認ください。保険制度は改定されることがありますので、最新の情報を入手されることをおすすめします。
Q5: 保田矯正は睡眠時無呼吸症候群にどう関わりますか?
保田矯正は、複数の矯正装置を組み合わせて、それぞれの長所を活かす治療です。スケルトン拡大装置で気道を広げ、成人の場合はマイクロインプラントを併用し、歯の重なりにはアラインチューブ、細かな仕上げにはマルチブラケット装置やアライナーを用いるなど、その方の状態に応じて組み合わせます。マウスピース単独で治療が完結する症例は全体の2割から3割程度ですので、気道の確保が目的の場合はなおさら装置の組み合わせが重要です。また、保田矯正では拡大の目的を、歯を並べることではなく鼻呼吸をしやすくすることと考えています。装置で構造を広げるだけでなく、MFT(口腔筋機能療法)で舌を正しい位置に導くことも並行して行い、両輪で改善を目指します。
Q6: 矯正を始めたらCPAPはやめてもいいですか?
自己判断でCPAPをやめることは危険です。必ず主治医と相談しながら進めてください。睡眠時無呼吸症候群は、放置すれば高血圧や心疾患、脳血管疾患のリスクを高める病気です。矯正治療によって気道が広がるまでには時間がかかりますし、重症度によっては、矯正治療と並行してCPAPを継続することが望ましい場合もあります。矯正治療は、あくまで気道が狭いという原因にアプローチする選択肢のひとつです。現在の呼吸を守りながら、並行して根本的な改善を目指すという考え方が大切です。医科の主治医と歯科が連携しながら進めていくことをおすすめします。
【院長コメント】
対症療法の先にある選択肢を、知ってほしいと思っています
睡眠時無呼吸症候群でCPAPやマウスピースを使われている方から、これをこの先ずっと続けるのでしょうか、というご質問をいただくことがあります。
CPAPも口腔内装置も、とても優れた治療法です。無呼吸を放置すれば全身の健康を脅かしますから、まず今の呼吸を確保することは何より重要で、これらの治療を否定するつもりは一切ありません。
ただ、これらはいずれも装着している間だけ気道を確保する治療です。外してしまえば、気道が狭いという状態そのものは変わりません。だからこそ、その先に、原因そのものを改善するという選択肢があることを知っていただきたいのです。
歯列を拡大すると、上あごの幅が広がり、その上にある鼻腔も広がります。ここで大切なのは、たくさん広げる必要はないということです。少しだけ現状より鼻腔が広がることで、十分楽に呼吸ができるようになります。同時に、口の中のスペースが広がることで、舌の居場所ができ、喉の奥に落ち込みにくくなります。
私が大切にしている保田矯正は、原因から治すことを考える矯正治療です。拡大の一番の目的は、鼻呼吸をしやすくすることであって、歯をきれいに並べることが最優先ではありません。だからこそ、成長のスピードに合わせた緩徐拡大を守りますし、上の前歯6本分で平均37mm程度という拡大量の上限も守ります。呼吸のためだからといって、無制限に広げてよいわけではないのです。
そして、かつては子供にしかできないとされていた拡大治療が、マイクロインプラントの力を得ることで、大人になっても行えるようになりました。当院ではこれを成人拡大と呼んでいます。
きれいになるための矯正治療は間違っていません。でも、私は健康できれいになってほしいと願っています。CPAPやマウスピースを恒久的に使わなくてもよくなる未来への入り口が、ここにあるかもしれません。気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
【監修】
みかみ歯科医院 院長 印藤 浩子
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